2022/09/20 09:31
撮影：いしかわみちこ(STUDIO322にて）初めてウォーターマークさんにお邪魔した際に、階段を登り、扉を開けて、「こんにちは」と声をかける・・そんな日常的なやりとりがありました。
日常の延長線上に潜むような仕事を、私はしていたいと考えているので、このなんてことのない一つ一つが、ギャラリーという空間で行われていることを、とても嬉しく思ったのです。
私は主に自分の持っている/持っていた衣服や身に着けるものをモチーフにリトグラフを制作します。
モノクロや版画を選ぶ理由は、それが個人の所有から離れ、誰にでも身近に感じることができるようになるのではないかと思うからです。
私は作品の中で個人的な話をしているけど、作品が製版を経て刷り上がり、展示空間に置かれることで、複製された衣服を通し、みた人が自分や他者にまつわる出来事や様々を思い起こすきっかけになれたら嬉しいです。
私のリトグラフの制作工程は、まず、アルミ版にトナーをアルコールで解いたもので線を描き、それをコンロで焼き付けます。
その上にリトクレヨンやダーマトグラフで落書きのような線を入れたり、先の線をなぞってみたりして、納得がいったり、疲れたら描画をストップします。
長くてもこの作業は1日以内に終わらせるようにしています。私の場合、あまり考えすぎたり手を加えすぎると、終わりがわからなくなり不安感が出てきてしまうので、なるべく早く切り上げるようにしています。
リトグラフは版画の中でも絵を描く行為に近いですが、それを一旦終わらせないことには刷りの工程に移れません。そういう部分に私は救われていると思います。
インクを練ったりプレス機を回したりといった製版や刷りの時間は、歌ったり考え事をしたりして、割と楽しくやっています。
身につけるものをモチーフにしているためか、家族や知り合いからお下がりの靴がモチーフとして工房に送られてくることがありますが
特に靴は身につけるものの中でも、外に出ることへの意識が強いように思います。
目的地に向かうために、その人がどうしてその靴を選んだのか、私は興味があるので、そういう制作もこれから続けていきたいと思っています。
今回の展示は、「かえらない部屋」というタイトルにしました。
帰らない、還らない、返らない、、様々な漢字が当てられると思うのですが、どれも自分の意志で選んでもらえたらと思っています。
かえれないのではなく、あくまでもかえらない。かえろうと思えば、かえれる部屋にもなり得る。
そんな風にどこかに何かを残してきた部屋が、記憶の隅っこに誰にでもあるのではないかなあと思いながら、ギャラリーの扉を閉めて階段を下り、国立駅までの並木道を歩きました。
それらを全部しまっておくことは、途方もなく大変なことだった。
注意深く、ブラウスのボタンをとめる。
そうしたら、この部屋にはもうかえらない。
2022.9/23Fri-10/9Sun
open 13:00-19:00 closed:9/27,9/28,10/4,10/5 火水休み 最終日17:00まで
＊作家在廊日はsnsなどでご確認ください。
＊一部の作品は《10/1-16》オンラインでもご紹介いたします。https://watermarkart.base.shop
この度、初めてWATERMARKで古屋真美さんの作品を紹介します。
私たちの身近な衣服、そのほとんどは大量生産の既製服ですが、袖を通すたびに体に馴染み、
持ち主の気持ちに寄り添い、様々な過去を共有するうちに唯一無二になってゆく。
そんな作者の思いが、リトグラフという版から生まれる複数性の作品へと再生させる行為に
形象化されているようです。そして、ファストファッションが問題視されている現在、簡単
に廃棄されてしまう服たちへの抗いのようにも見えます。
今回、架空の女性の部屋を再現するような展示を試み、作者の世界を表現したいと思います。
ぜひご高覧ください。
古屋真美
1994年山梨県生まれ。2020年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻版画コース卒業。2021 版画工房「LITTLE PRESS STUDIO」オープン。
展示・受賞
2022 個展｢キュレーターズ・アイ 古屋真美展」（山梨県立美術館/山梨）
個展「tiny escape」（PLAINE PEOPLE 青山、京都、六本木、東急プラザ銀座）
2021 「SICF22 EXHIBITION部門」 (スパイラルホール/東京) スパイラル奨励賞 受賞
「START ART PRINT」（＋ART GALLERY 渋谷スクランブルスクエア/東京)
2020 「Street Museum TOKYO MIDTOWN」（東京ミッドタウン/東京）
2019 「TOKYO MIDTOWN AWARD 2019 アートコンペ」 優秀賞 受賞
2019 「第44回全国大学版画展」 優秀賞 受賞
1994年山梨県生まれ。2020年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻版画コース卒業。2021 版画工房「LITTLE PRESS STUDIO」オープン。
展示・受賞
2022 個展｢キュレーターズ・アイ 古屋真美展」（山梨県立美術館/山梨）
個展「tiny escape」（PLAINE PEOPLE 青山、京都、六本木、東急プラザ銀座）
2021 「SICF22 EXHIBITION部門」 (スパイラルホール/東京) スパイラル奨励賞 受賞
「START ART PRINT」（＋ART GALLERY 渋谷スクランブルスクエア/東京)
2020 「Street Museum TOKYO MIDTOWN」（東京ミッドタウン/東京）
2019 「TOKYO MIDTOWN AWARD 2019 アートコンペ」 優秀賞 受賞
2019 「第44回全国大学版画展」 優秀賞 受賞
